只見町に「季の郷湯ら里」という温泉宿泊施設ができてもうすぐ12年になる。結婚式場にも使える多目的ホールやレストラン、ホテルを兼ねた湯ら里だけで約20億円、隣の村民向けの温泉施設「村湯」や隣接する公園や遊歩道、周辺整備なども含めると総投資額は30億円を超えるそうだ。
人口5200人ほどの小さな町には巨額の投資と思われて、最初は口の悪い人は「そのうち、湯ら里、クラリ、バタリだべ」などと皮肉られていた。設備が新しいうちはお客さんも来るけれども、設備の老朽化とともに客足が遠のいてしまうのが、これまでの山村の観光施設の多くがたどるパターンだった。しかし、12年経っても湯ら里の客足や評判は落ちてはいないようだ。むしろ、公共団体が建設した観光施設の中では、健闘していると言う評判も高い。
わたしはサウナが好きなので、できた時からずっと出張の無いときにはほぼ1日おきにサウナに通っている。たまには、レストランで食事したり、農家のクセに宿泊客用に売っているトマトを買って帰ったりしている。いつも感心するのはレストランのテーブルに飾られている花だ。
野の花だったり、野菜の花だったり、花壇の花だったりしているが、この施設で働いている人たちが自主的に自分の家の花をもってきたのを飾っているのだと聞いた。テーブルごとに飾られている花が違うことも多い。菜の花や大根の花、ジャガイモの花などの野菜の花が飾られていたこともあった。営業が始まった直後からずっと続いている。
初めて見たときに、良い習慣だから、続いて欲しいなと思った。働く人や経営する人が変わってしまえば続かないだろうなとも思った。12年の間には、職員もほとんど入れ替わっている。待遇が不満でやめた人もいると聞いている。それでも中断せずに続いているのはすごいことだなと思う。
今まで、山村地域に作られた公共施設や観光施設が時間とともに寂れた感じになってしまうのは、そこで働いている人たちの気持ちも時間とともに盛り上がらなくなり、お客さんへの対応や施設を維持管理、清掃しようという気力も時間とともに失われていくせいもあるのではないかと思う。お客さんの来るところに働いている人の負担や心遣いで花を飾り続けることは、口で言うのは簡単でも、花のない時期があったり、仕事が忙しくて疲れていたり、人間関係がうまく行ってなかったりすれば、なかなか続けられるものではないと思う。テーブルの上の花を見るたびにいつまでも続けて欲しいなと思う。できるだけ地元のその季節にしかない花、花屋で売られていない花がいいなとも思う。
ぜひともこういう習慣は他の施設でも見習ってやって欲しいなと思う。そういうことを続けていることで守られていることや、新しいお客さんをひきつけていることもあるような気がする。
---- たもかく ----