入梅の頃には夏グミが赤くなる。グミは不思議な果物だ。食べてまずいわけでもないのに、果物屋に並んでいるのを見たことがない。でも、わたしが子供の頃はどこの農家も何本ものグミを家の周りに植えていた。夏に実をつけるものが3本くらい。秋に実をつけるのが2本くらい。実が細長いものが多かったが、中には丸い実をつける品種もあった。品種改良がされている話も聞かないのに、ずいぶんといろんなグミの木があった。
赤くなるのが待ちきれずに、オレンジ色くらいで甘酸っぱいうちに食べつくしてしまうことが多かった。種を吹き出すのが面倒で種ごと食べて叱られことも多かった。グミの木の周りに行儀悪く、種を吹き出してしまったり。熟れてくるとハチが集まってきて、刺されたこともあった。
秋グミは川原には野生種がいくらでも生えていた。ヤナギが密生しているところを「ヤナギもだ」と呼んでいたが、「グミもだ」もヤナギに負けないくらいいたるところにあった。ところが今、川原に行っても、ヤナギはいくらでもあるのに、グミもだはもちろん、グミの木は1本も見つからない。不思議なこともあるものだ。川原に残らなければ川沿いの土手や、藪の中にでも残ってもよさそうなのに、まず見つからない。川の環境がぐみに似合わなくなってしまったのだろうか。
農家の庭先のグミの木も切られて減る一方だ。子供がいないとグミを食べる人もいなくて、ハチや野鳥が来て、食べ散らかして、汚いから、嫌になってしまうのかもしれない。
都会から地元へ帰ってきたばかりの頃、グミをホワイトリカーにつけて、果実種を作ってみたことがあった。実は赤いのにきれいなピンク色になり、とてもきれいなおいしい果実酒ができた。翌年調子に乗ってたくさん作ってグミの実を取り出すのが遅れたら、発酵して、ビンのふたが飛んだ。調べてみたらグミはブドウと同じように果実酒にしていい果物のリストには入っていなかった。グミにはお酒に発酵する天然の酵母がたくさんついていて、種を除いて、ジュースにしてしまえば、自然発酵でお酒になってしまうようだ。
ぐみの木が大木に成長しているのはあまり見ないが、近所には10メートルくらいまで育って、はしごをかけないと取れないほどの高さにまで大きくなっている木もある。グミの気が大きくならないのは、子供たちが取りやすいように、芯を止めて、上に伸びないようにしているだけなのかもしれない。
川原に自然に生えていたグミの木がなつかしくて、何とか復活できないものかなと思っていたら、南会津町の高杖の山には野生のグミの木がまだたくさんあった。高杖は南会津を流れる伊南川の上流の位置にあるから、只見の川原にあったグミの木ももともと高杖の山のグミが下流に流れて、川原のグミになったのかもしれない。今年は何本かもらって、川に植えてみようかなと思っている。
--- たもかく ---